ChatGPT・Claude・Gemini などのAIを、調べもの・文章・資料づくりに使う方法を紹介します。

Cautions

仕事での注意点

AIを使ったことを取引先に伝えるべきか

目次
  1. 確認すべきこと
  2. 伝えたほうがよい場面
  3. 伝えないことのリスク
  4. 伝え方の例
  5. 取引先から聞かれたとき
  6. 社内で方針を決める
  7. 業界や分野による違い
  8. 伝えることの利点
  9. 説明できる状態にしておく
  10. 開示の文面を用意する
  11. 小さな会社やフリーランスの場合
  12. 次にやること

AIを使ったことを取引先に伝えるかどうかに、全国一律の決まりはありません。契約書の条項、取引先のルール、会社の方針、成果物の性質を確認し、迷うときは伝える方向で考えるのが、信頼を保つうえで無難です。

AIを使うこと自体は、多くの場面で問題になりません。問題になるのは、約束と違う使い方をしたり、確認を怠ったりして、結果に責任を持てなくなる場合です。

確認すべきこと

伝えるかどうかを考える前に、次を確認します。

  1. 取引先との契約書に、AIの利用やデータの取り扱いに関する条項があるか
  2. 取引先が、発注の条件としてAIの利用について定めているか
  3. 自社に、AI利用の開示に関する方針があるか
  4. 成果物の著作権や、オリジナル性が求められる契約か

契約に、第三者への情報提供の禁止や、秘密保持が定められている場合は、AIサービスへの入力が、その条項に触れる可能性があります。この点は、AIを使ったことを伝えるかどうか以前の、使ってよいかの問題です。

契約の解釈に迷うときは、法務の担当者や専門家に確認します。

伝えたほうがよい場面

次のような場面では、AIの利用を伝えることを検討します。

  • 取引先が、AIの利用について事前に確認を求めている
  • 成果物が、専門性や創作性そのものを対価としている(デザイン、執筆、翻訳など)
  • 取引先の情報を、AIサービスに入力する可能性がある
  • 成果物の一部または大部分が、AIの出力に基づいている
  • 取引先の業界やルールで、AIの利用が規制または管理されている

反対に、メールの文面を整えた、誤字を直した、といった補助的な使い方は、一般的には個別に伝えなくても問題にならないことが多いです。ただし、取引先の考え方によって、感じ方は異なります。

伝えないことのリスク

AIを使っていることを隠していて、後から分かると、信頼を損なうことがあります。特に、取引先が「人が書いたもの」と期待していた場合に、問題になりやすくなります。

また、AIの出力に誤りがあって問題になったとき、AIの利用を伝えていなかったことが、不信感を強める原因になります。事前に、どの範囲でAIを使い、人がどう確認したかを説明できれば、信頼につながります。

意図的に隠すつもりがなくても、聞かれたときに正直に答えられる状態にしておきます。

伝え方の例

伝える場合は、簡潔に、事実と、確認の体制を示します。たとえば、次のような形です。

「本資料の作成にあたり、文章の整理と校正の一部に、生成AIを利用しています。内容の事実確認と最終的な責任は、弊社の担当者が負っています。入力にあたっては、貴社の情報が外部に出ないよう配慮しています。」

この例のように、(1)どの工程で使ったか、(2)人が確認していること、(3)情報の扱いへの配慮、の三点を書くと、相手が安心しやすくなります。

見積書や契約書に、AIの利用方針を記載しておく方法もあります。個別の連絡より、事前の取り決めのほうが、お互いに誤解がありません。

取引先から聞かれたとき

取引先から「AIを使いましたか」と聞かれたら、事実を正直に答えます。曖昧にごまかすと、信頼を失います。

答え方は、次の順に整理します。

  1. 使ったか、使っていないか
  2. 使った場合、どの工程で、どんなサービスか
  3. 人がどう確認したか
  4. 相手の情報の扱い

答えにくい質問、たとえば「どのサービスを使ったか」「入力した情報は何か」などは、会社の方針に従って回答します。社内で答え方を決めておくと、担当者が迷いません。

社内で方針を決める

個人の判断に任せると、担当者によって対応がばらつきます。社内で、次の方針を決めておきます。

  • AIの利用を開示する基準(どんな場合に伝えるか)
  • 開示の文面のひな型
  • 取引先から質問されたときの回答の担当者
  • 取引先の契約条項の確認の手順

方針は、取引先との関係や、業界の動きによって見直します。最近は、AIの利用に関する指針を公表する会社や業界団体も増えています。公的機関や業界団体の資料も参考にしてください。

業界や分野による違い

AIの利用の開示に関する考え方は、業界や分野によって異なります。報道、出版、教育、医療、金融、法律などの分野では、独自の指針や規制が議論されています。自分の業界で、業界団体や監督官庁が公表している指針がないかを調べます。

分野によっては、AIの利用の表示が求められたり、特定の用途への利用が制限されたりしています。最新の情報は、団体や官庁の公式の資料で確認してください。

伝えることの利点

AIの利用を前向きに伝えることには、利点もあります。AIを活用して、作業時間を短縮し、その分を確認や相談に使っていると説明できれば、取引先にとっても、品質やスピードの面で利点になります。

隠すより、使い方と確認の体制を説明するほうが、現代的な仕事の進め方として理解されやすくなってきています。ただし、取引先の考えにも配慮し、押しつけにならない伝え方を選びます。

説明できる状態にしておく

伝えるか伝えないかに関わらず、聞かれたら説明できる状態にしておきます。いつ、どの業務で、どのサービスを使い、どう確認したかを、簡単なメモに残しておきます。このメモがあれば、取引先からの問い合わせや、社内の監査があっても、慌てずに答えられます。

開示の文面を用意する

開示する場合に備えて、いくつかの文面を準備しておくと便利です。契約書に入れる一文、見積書に添える注記、成果物の末尾につける説明、メールで尋ねられたときの返信の四種類程度です。

文面は、短く、事実だけを書きます。「生成AIを利用しました」だけでは足りず、どの工程で、人がどのように確認したかを添えると、相手が安心します。法的な意味を持つ文面は、法務担当者に確認してもらいます。

小さな会社やフリーランスの場合

担当者が一人の場合は、取引先ごとに判断する必要があります。契約書や発注書にAIの条項があれば従い、なければ、新しい仕事を受けるときに、AIの利用方針を伝えておくと誤解が減ります。自分の方針を、ホームページや提案書に書いておく方法もあります。

次にやること

自分の仕事について、次の整理をしてみてください。

  1. AIを使っている業務を、一覧にする
  2. 各業務の取引先との契約に、AIや情報の取り扱いの条項があるか確認する
  3. 伝えるべき業務と、伝えなくてもよい業務に分ける
  4. 上司に相談して、会社としての方針を決める

方針が決まれば、取引先から聞かれたときも、落ち着いて答えられます。AIを使うことが、誠実さや品質を損なうものではないと示せるよう、確認と責任の体制を整えておいてください。