キャッチコピーの案出しにAIを使うときは、「数を出してもらい、自分が選んで磨く」という役割分担がうまくいきます。AIは20個、50個と案を出すのが得意ですが、どの案が自分の商品の魅力を正しく伝えるかを判断するのは人の仕事です。
良いコピーは、商品の特徴と読み手の悩みが出会う場所から生まれます。AIに丸投げするのではなく、材料を丁寧に渡すところに、成否が分かれます。
材料を整理して渡す
案を出してもらう前に、材料を書き出します。次の項目を、できるだけ具体的に埋めます。
- 商品やサービスの内容:何を、どのように提供するか
- 読み手:どんな人が、どんな場面で、何に困っているか
- 他との違い:事実として言える特徴や強み
- 読み手に取ってほしい行動:購入、問い合わせ、来店など
- 使ってはいけない表現:法律や自社のルールで避けるべき言葉
特に「他との違い」は、事実に基づくものに限ります。根拠のない「最高の」「No.1の」といった言葉は、景品表示法などの観点から問題になるおそれがあります。詳しくは、消費者庁の案内や専門家に確認してください。
案を大量に出してもらう
材料が整ったら、案を出すよう頼みます。「次の材料をもとに、キャッチコピーの案を30個出して。切り口を変えて、悩みに寄り添うもの、特徴を端的に言うもの、問いかけるもの、数字を使うもの、を混ぜて。誇張や断定は避けて」と指定します。
数を求める理由は、最初の数個は無難な案になりやすく、多く出すうちに意外な切り口が見つかるからです。30個のうち、使えるのは数個でも、それが糸口になります。
「別の切り口で、もう20個」と重ねて頼むこともできます。出尽くしたと感じたら、材料を見直します。材料が薄いと、案も似たものばかりになります。
案を選ぶ基準
出てきた案は、次の基準で絞ります。
- 読み手が、自分のことだと感じるか
- 商品の中身と、約束の内容が合っているか
- 事実に反する、あるいは誇大な表現になっていないか
- 声に出して読みやすいか、一度で意味が分かるか
- 競合の商品と似ていないか
選ぶ作業は、人の目で行います。AIに「この30個を、上の基準で評価して」と頼むこともできますが、評価の結果は参考程度にします。最終的には、実際の読み手に近い人に見せて、反応を聞くのが堅実です。
三人に見せて、一番に目が止まったコピーはどれか、どんな商品だと想像したかを聞きます。想像した商品と実際の商品がずれていたら、そのコピーは誤解を生んでいます。
案を磨く
選んだ案は、そのまま使わず、磨きます。AIに「この案の言葉を変えずに、リズムだけ整える案を5つ」「同じ意味で、もっと短くする案を5つ」のように、一方向に絞った依頼をすると、細かな調整ができます。
磨く過程で、余計な修飾語を削ります。「驚くほど」「圧倒的に」のような強調語は、根拠が伴わなければ信頼を損ないます。具体的な事実、たとえば「3つの工程を1つに」といった表現のほうが、説得力があります。ただし、数字は事実に基づくものに限ります。
使う場所で見え方を確認する
コピーは、使う場所で印象が変わります。ウェブサイトの見出し、チラシ、広告バナー、SNS投稿。それぞれの大きさや文字数に合わせて、長さを調整します。
実際の画面や紙面に当てはめて、読みやすさを確認します。スマートフォンの画面で見ると、改行の位置が変わって意味が取りにくくなることがあります。
他の人の表現との距離
AIが出す案が、既存のコピーと偶然似てしまうことがあります。特に有名な広告のフレーズと似ていないかを、検索で確認します。
商標として登録されている言葉や、他社が使っているフレーズを、気づかずに使うリスクもあります。本格的に使う前に、検索して確認し、必要に応じて専門家に相談します。
使ってはいけない言い回し
キャッチコピーでは、読み手を引きつけようとして、つい誇張した言葉を使いたくなります。最上級や効果の断定といった表現は、根拠を示せない限り避けます。商品の性能や効果について、実際より優れていると誤認させる表示は、法令で規制される場合があります。
AIに案を出させる段階から、「誇張表現、最上級、効果の断定は使わない」と条件に入れておきます。それでも混ざることがあるので、最終案は、一語ずつ「これは事実として言えるか」を自分に問いかけて点検します。
小さく試して反応を見る
コピーは、頭で考えるだけでは良し悪しが分かりません。広告やバナー、メールの件名など、小さな場面で二つの案を出し、反応の差を比べる方法があります。差が出たら、反応の良いほうを採用し、その理由を考えます。
試す際は、一度に変える点を一つに絞ります。コピーと画像を同時に変えると、どちらが効いたのか分からなくなります。
言葉の引き出しを増やす
AIが出す案を読み続けると、自分の言葉の引き出しも増えていきます。気に入った言い回しや、響かなかった言い回しを、メモに残しておきます。「なぜ良いと感じたか」「なぜ合わないと感じたか」を一言添えると、自分の判断の基準が磨かれます。
商品名やサービス名の案出し
キャッチコピーと同様に、商品名やサービス名の案出しにもAIは使えます。ただし、名前は、既存の商標と重ならないことの確認が欠かせません。AIが出した名前が、すでに他社に使われていることがあります。
特許庁が提供する商標の検索サービスなどで、候補の名前を調べます。最終的に商標登録を検討する場合は、弁理士などの専門家に相談してください。
完成したコピーの管理
使ったコピーは、日付、使った場所、反応の記録と一緒に保存します。同じ商品に何度もコピーを作る場合、過去の案を見返すことで、新しい案が重ならないようにできます。
保存した案は、AIに渡して「これまでの案と重ならない切り口で」と頼めます。記録が溜まるほど、自分の商品に合った表現の傾向が見えてきます。
社内で意見を集めるとき
複数の人でコピーを選ぶと、意見が割れて決まらなくなることがあります。決める基準を事前に共有し、「誰に向けたコピーか」を全員が理解したうえで投票します。好みではなく、読み手にとって分かりやすいかどうかで選ぶと、議論が収まりやすくなります。AIの案と人の案を混ぜて、どちらが作ったかを伏せて比べる方法も、公平な選び方です。
次にやること
宣伝したい商品やサービスが一つあれば、次の順で進めてみてください。
- 材料を五項目に分けて書き出す
- AIに30個の案を出させる
- 5つの基準で3案に絞る
- 3人に見せて、反応を聞く
- 一番反応の良かった案を磨いて、実際の場所に当てはめる
案出しの過程で、自分の商品の伝え方が整理されます。コピーとして使わなくても、商品説明や自己紹介の文章に活きる言葉が見つかることがあります。




