FAQの下書きをAIで作るときは、AIに質問を想像させる前に、実際に寄せられた問い合わせを集めて渡します。実際の質問を材料にすることで、現場の悩みに合ったFAQになり、読まれる確率が上がります。
AIは、似た質問をまとめたり、回答を読みやすく整えたりするのが得意です。回答の内容が正しいかどうかは、担当者が確認するという分担にします。
実際の質問を集める
FAQの材料になる質問は、次のところにあります。
- メールの問い合わせ履歴
- 電話や窓口で受けた質問のメモ
- チャットやSNSで寄せられた声
- 社内で同僚から聞かれたこと
- 営業や接客の現場で、よく聞かれること
これらを、日付つきで一覧にします。個人情報、たとえばお客様の名前、連絡先、注文番号は、AIに入力する前に削除します。質問の内容だけを抜き出し、「お客様A」のような記号も使わず、質問文だけにします。
質問が少ない場合は、担当者に「よく聞かれることを、思いつくだけ挙げてください」と頼みます。数が少なくても、最初のFAQには十分です。
質問をまとめて分類する
集めた質問は、AIに渡して整理します。「次の問い合わせ文から、内容が同じ質問をまとめ、件数の多い順に並べて。さらに、テーマごとに分類して」と頼みます。
分類の例は、「申込み・支払い」「使い方」「トラブル」「解約・変更」などです。分類は、お客様が探しやすい言葉で名前をつけます。社内の用語ではなく、お客様が使う言葉を選びます。
件数の多い質問から順に、FAQに載せます。件数が少ない質問は、今は載せなくても構いません。FAQが長くなりすぎると、探しにくくなります。
回答を書く
回答は、担当者の知識と、公式の情報に基づいて書きます。AIに回答の下書きを頼むときは、正しい情報を渡して、文章を整えてもらいます。
依頼の例は次のとおりです。「次の質問に対する回答を、お客様向けに書いて。事実は以下のとおり。事実に書かれていないことは付け足さないで。結論を先に、2〜3文で。専門用語は避けて」
回答に、料金、期限、条件が含まれる場合は、最新の情報と照合します。古い情報が残っていると、トラブルのもとになります。
回答の最後に、「それでも解決しない場合」の連絡先を書きます。FAQで解決しない人の受け皿を用意しておくと、お客様の不満を減らせます。
書き方の型
読みやすいFAQの回答は、次の型に従います。
- 最初の一文で、質問に直接答える
- 必要な条件や例外を、箇条書きにする
- 手順がある場合は、番号つきで書く
- 関連するFAQへのリンクを添える
長い説明は、読み手が疲れます。一つの回答は、スマートフォンの画面で、スクロールせずに読める分量が理想です。詳しい内容は、別ページにまとめて、リンクで案内します。
AIに「この回答を、中学生にも分かる言葉で、半分の長さにして」と頼むと、簡潔になります。ただし、短くしたことで、条件が抜けていないかを確認します。
禁止の表現と確認事項
FAQの回答では、次の点に注意します。
- 法律や制度に関わる説明は、一般的な内容にとどめ、詳しくは専門家への相談を案内する
- 効果や成果を約束する表現は避ける
- 他社の製品やサービスについて、事実と異なることを書かない
- 医療、金融など、規制のある分野では、会社の確認を受ける
AIが書いた回答に、断定的な表現、たとえば断定的な言い切りが含まれていないかを点検します。例外のある内容を断定すると、後で問題になります。
公開と更新
FAQを公開する前に、他の部署の人や、事情を知らない人に読んでもらいます。質問の言葉がお客様の言葉になっているか、回答が分かりやすいかを聞きます。
公開後は、定期的に見直します。問い合わせの内容が変わったり、サービスの仕様が変わったりすると、FAQも古くなります。目安は、月に一度の見直しです。AIに、新しい問い合わせの一覧を渡して、「既存のFAQでカバーされていない質問を挙げて」と頼むと、追加すべき項目が分かります。
問い合わせの数を測る
FAQの効果は、問い合わせの数の変化で確かめられます。公開前の数か月の件数と、公開後の件数を比べます。特に、FAQに載せた質問に関する問い合わせが減っているかを見ます。
減っていない場合は、FAQがお客様に見つかっていない、あるいは回答が分かりにくい可能性があります。FAQへのリンクの位置を変える、質問の言葉を変える、回答を短くするなどを試します。
回答の更新の担当を決める
FAQは、公開後に古くなりやすい文書です。内容を更新する担当者を決め、更新日を各回答に表示します。担当者が不在になっても更新が止まらないよう、二人以上を割り当てます。
サービスの変更や、料金の改定があったときは、FAQのどこが影響を受けるかを確認する手順を決めておきます。AIに、変更点とFAQの一覧を渡して、「この変更で、修正が必要なFAQを挙げて」と頼むと、見落としを減らせます。
社内向けFAQにも使える
お客様向けだけでなく、社内向けのFAQも有効です。経費の精算方法、休暇の申請、システムの使い方など、同じ質問が何度も寄せられる内容を、まとめておきます。新入社員の立ち上がりが早くなり、先輩の負担も軽くなります。
AIが作った回答の注意点
AIに回答を作らせると、一般的で当たり障りのない文章になりがちです。自社のサービスに固有の条件、たとえば「注文後3日以内なら変更可能」のような具体的な内容は、自分たちで確認して書き込みます。
また、AIは「お客様のご要望に応じて対応いたします」のような、あいまいな表現を使うことがあります。お客様が知りたいのは、具体的に何ができて、何ができないかです。あいまいな表現を見つけたら、具体的な条件に置き換えます。
多言語や特別な配慮が必要な場合
外国語を話すお客様や、高齢の方、障害のある方など、さまざまなお客様に向けたFAQでは、言葉や形式の配慮が必要です。専門用語を避ける、文字を大きくできるようにする、電話やメールなど複数の連絡手段を示すといった工夫です。
AIに翻訳を頼むと速くできますが、翻訳の正確さは、母語の話者に確認してもらうのが安心です。
質問の言い方を寄せる
お客様は、会社の用語ではなく、自分の言葉で質問します。FAQの質問文は、実際の問い合わせの言葉に寄せます。たとえば「契約の解除手続き」ではなく「やめたいときはどうすればいいですか」のようにします。AIに、実際の問い合わせ文を渡して、質問文を自然な言葉に整えてもらいます。
次にやること
問い合わせが寄せられる部署にいる方は、次の順で始めてください。
- 直近の問い合わせから、質問文だけを30件ほど集める
- 個人情報を除いて、AIに分類と件数の整理を頼む
- 件数の多い上位5つに、回答を書く
- 同僚に読んでもらい、直してから公開する
最初は5問でも、役に立ちます。問い合わせの数が減るかどうかを記録しながら、少しずつ増やしてください。




