業務マニュアルをAIで作るときは、先に担当者の作業をメモや録音で書き出し、それをAIに整理してもらう流れが現実的です。AIにゼロから手順を作らせると、実際の職場にはない作業が混ざるため、材料は現場から取ります。
マニュアルは、作って終わりではなく、使ってもらって直すものです。AIは整理と文章化に役立ちますが、正しさの確認は、実際にその作業をしている人が行います。
マニュアルの対象を決める
最初に、どの作業のマニュアルを、誰が使うのかを決めます。
- 作業:請求書の発行、問い合わせ対応、備品の発注など
- 読み手:新入社員、他部署からの応援者、パートの方など
- 使う場面:初めてやるとき、たまにやるとき、忘れたときの確認
- 求める粒度:画面操作を一つずつ書くか、要点だけでよいか
読み手によって、必要な説明の量が変わります。新入社員には、用語の説明や、作業の目的も必要です。経験者向けなら、手順の抜け漏れを防ぐチェックリストで十分なこともあります。
一つのマニュアルに、複数の読み手の要望を詰め込むと、長く読みにくくなります。読み手ごとに分けるか、基本の手順に加えて、経験者向けの補足を別に設けます。
担当者から手順を聞き出す
手順を最もよく知っているのは、普段その作業をしている担当者です。ただし、慣れた人は無意識に行う作業が多く、言葉にするのが難しいことがあります。
聞き出す方法は、次のいずれかです。
- 作業しているところを横で見ながら、気づいたことをメモする
- 担当者に作業しながら声に出して説明してもらい、録音する
- 作業の画面を録画しながら、操作を確認する
録音や録画は、会社の規則と本人の同意の範囲で行います。画面に顧客の情報や社外秘が映る場合は、そのままAIに入力しないよう注意します。
メモや文字起こしは、AIに渡して整理します。「次のメモは、請求書発行の作業を担当者が説明した内容です。手順に番号をつけて整理してください。メモにない手順は付け足さず、不明な点は『要確認』と書いてください」と頼みます。
構成を決める
マニュアルの基本の構成は、次のとおりです。
- この作業の目的と、いつ行うか
- 始める前に必要なもの(権限、資料、道具)
- 手順(番号つきで、一つの手順に一つの操作)
- 完了の確認方法
- よくある間違いと、その対処
- 困ったときの連絡先
AIに、この構成に沿った下書きを頼みます。手順は、一つの番号に一つの動作だけを書きます。「画面を開いて入力して保存する」ではなく、三つの手順に分けます。分けると、読み手が今どこにいるのかが分かりやすくなります。
判断が必要な場面を書く
マニュアルで見落とされやすいのは、判断が必要な場面です。「金額が10万円以上なら、上長の承認を得る」のような条件分岐は、読み手が迷うところです。
担当者に「この作業で、迷う場面や、例外が起きる場面はありますか」と聞き、答えを材料に加えます。AIに、「条件によって手順が変わる箇所を、表にして整理して」と頼むと、分かりやすくまとめられます。
例外の扱いが決まっていない場合は、マニュアルに書かずに、決まっていないことを課題として別に記録します。担当者の判断に任せている部分を、そのまま文書に落とすと、後でトラブルになることがあります。
画像や画面の写真
画面操作のマニュアルは、画面の写真を入れると分かりやすくなります。撮影した画像に、顧客の名前や個人情報が写っていないかを確認し、あれば隠します。
AIに画像を渡して説明文を作らせることもできます。ただし、画像に写っている情報を外部のサービスに送る点に注意します。社内のルールに従って判断してください。
画面は、ソフトの更新で変わります。画像が古くなったときに直しやすいよう、マニュアルの末尾に更新日と、確認した人を記録します。
使ってもらって直す
マニュアルが完成したら、その作業に慣れていない人に、マニュアルだけを見て作業してもらいます。つまずいた箇所、迷った箇所を観察し、記録します。
AIに、つまずいた箇所を伝えて、「この説明を、初めてやる人にも分かるように書き直して」と頼めます。直したら、再度別の人に試してもらいます。
担当者にも、完成したマニュアルを確認してもらいます。「実際の作業と違う点はないか」「抜けている注意点はないか」を聞きます。
動画や写真を使った手順の記録
文章だけでは伝わりにくい作業は、写真や短い動画を使うと理解が早くなります。担当者の作業を撮影し、その映像を見ながら、手順を文章にします。映像から文字起こしを作れる機能もありますが、画面に写る情報に機密が含まれていないか確認します。
動画は、更新が必要になったときに作り直す手間がかかります。変更が多い手順は、文章と画像の組み合わせにし、変更が少ない手順は動画にする、という使い分けも考えられます。
目次と検索のしやすさ
マニュアルが増えると、必要な手順を探すのに時間がかかります。目次を作る、作業名で統一した名前をつける、よく使う手順を一覧にまとめる、といった工夫が役立ちます。
AIに、マニュアルの一覧を渡して、「作業の種類ごとに分類して、目次を作って」と頼むと、整理の案が得られます。名前のつけ方に決まりを作り、「作業名対象更新日」のように統一します。
属人化の解消という目的
マニュアルを作る本来の目的は、特定の人にしかできない仕事をなくすことです。作る過程で、担当者の頭の中にあった暗黙の知識が、文章として表に出てきます。これは、組織にとって大きな資産になります。
担当者が忙しい場合は、短時間のインタビューを重ねて、少しずつ進めます。AIを使えば、インタビューの内容を整理する時間を減らせるため、担当者の負担を抑えられます。
完成後の更新ルール
マニュアルは、完成してからが本番です。半年に一度は見直す、業務の手順が変わったらすぐ更新する、といったルールを決めます。更新する担当者と、更新の履歴を残す場所も決めておきます。
AIに、変更点を伝えて、「関係する手順を洗い出して」と頼むと、更新の漏れを減らせます。
最初の完成度の目安
最初のマニュアルは、完璧でなくて構いません。八割の完成度で使い始め、使う人の声で直していくほうが、実用的です。完璧を目指して公開が遅れるより、不完全でも早く現場に出して、改善の材料を集めるほうが、結果として良いものになります。
次にやること
自分の部署で、よく人に聞かれる作業が一つあれば、そのマニュアル作りを始めてください。
- 作業と読み手を決める
- 担当者に説明してもらい、メモを取る
- AIにメモを整理させ、「要確認」の箇所を埋める
- 初めての人に使ってもらい、つまずきを直す
- 更新日と、担当者の名前を記録する
最初から完璧を目指さず、1枚のチェックリストから始めて、使いながら育てていくと、続きやすくなります。




