提案書の骨子をAIに作らせるときは、相手の課題、自社の提案内容、根拠、費用、進め方の五つを先に整理して渡します。AIは骨子の形を整えるのは得意ですが、相手の本当の悩みや、自社が実際にできることまでは知らないためです。
骨子ができた時点で、提案書の八割は決まります。残りの作業は、骨子に事実と根拠を埋めていくことです。ここでは、骨子づくりの手順と、AIの出力を点検する観点を紹介します。
提案の前提を整理する
AIに頼む前に、前提を書き出します。
- 相手:会社の事業、規模、担当者の役割
- 相手の課題:打ち合わせで聞いた内容、困っている点
- こちらの提案:何を、どのように提供するか
- 期待される効果:事実として言える範囲
- 条件:予算の目安、期限、制約
相手の課題は、聞いた言葉のまま書きます。自分の解釈や推測は、「解釈」として別にします。AIが相手の課題を想像で作り出さないように、「ここに書かれた課題以外は付け足さないで」と添えます。
相手の会社について調べた情報は、公式サイトなどで確認できるものだけを使います。確認できない情報を、事実として書くのは避けます。
骨子の構成を決める
提案書の標準的な構成は、次のとおりです。
- 要約:提案の結論と、期待する決定を一枚で
- 現状と課題:相手が抱えている問題の整理
- 提案内容:課題に対する具体的な解決策
- 期待できる効果:何がどう変わるか
- 進め方とスケジュール:誰が、いつ、何をするか
- 費用:見積もりと、含まれる範囲
- 次のステップ:決定してほしいこと、連絡の方法
この構成をAIに渡して、「前提の情報を元に、各項目に書く内容の要点を箇条書きで出して」と頼みます。文章ではなく要点にしておくと、確認や修正がしやすくなります。
効果の書き方に注意する
提案書で最も気をつけたいのは、期待できる効果の書き方です。AIは、魅力的な効果を並べようとして、実際には保証できない内容を書くことがあります。
「売上が上がると言い切る」「導入が簡単だと言い切る」といった表現は避けます。根拠のない数字も入れません。効果は、「過去の同種の取り組みで、時間が短くなったという報告がある」のように、事実に基づく範囲で書きます。
効果の数字を出す場合は、出典か、自社の実績の記録を示します。実績を使う場合は、相手の許可を得た範囲に限ります。
AIに「この効果の記述のうち、根拠が示されていないものはどれか」と聞くと、書き直す箇所が見つかります。
費用と条件の扱い
費用は、提案書の中で最も正確さが求められる部分です。金額、数量、範囲、期間、支払条件を、AIに作らせず、自分で作った見積もりを元に書きます。
AIに頼めるのは、見積もりの項目を分かりやすく表にする作業や、説明の文章を整える作業です。数字を扱うときは、AIが表を作ったあとに、合計金額と各項目の金額を電卓で検算します。
含まれないもの、つまり範囲外の作業も明記します。「この見積もりには、データの移行作業は含まれません」と書いておくと、後のトラブルを避けられます。
点検の観点
骨子とその後の本文を点検するとき、次の観点で見ます。
- 相手の課題に、正面から答えているか
- 提案内容が、自社の実際にできる範囲に収まっているか
- 効果の記述に、根拠のない断定や誇張がないか
- 数字が、見積もりや元のデータと一致しているか
- 相手が次に何をすればよいかが明確か
- 相手の会社名、担当者名、製品名に誤りがないか
AIに「相手の立場で、この提案書を読んだときの疑問や不安を5つ挙げて」と頼むのも有効です。出てきた疑問に、あらかじめ答えを用意しておけば、提案の説得力が増します。
機密と著作権への配慮
提案書づくりに相手の情報を使う場合は、AIに入力してよい範囲を確認します。相手との契約書の秘密保持の条項や、会社のルールに従います。
また、過去の提案書や他社の資料の文章を、そのまま流用することは避けます。AIに「この文章を参考に」と頼んだ場合も、出力が元の文章に酷似していないかを確認します。
提案書のレビューの進め方
提案書を相手に出す前に、社内でレビューを受けます。レビューする人には、提案書の目的と、相手の情報を伝えたうえで、「相手の立場で読んで、疑問に思う点を挙げてください」と頼みます。
AIにも、レビューの補助を頼めます。「この提案書の、論理の飛躍している箇所、根拠が弱い箇所、用語が分かりにくい箇所を指摘して」と頼みます。指摘された箇所を直し、再度、人によるレビューを受けます。
相手に合わせた調整
同じ提案でも、読む相手によって、強調するべき点が異なります。経営者には費用対効果とリスクを、現場の担当者には使いやすさと導入の負担を、情報システムの担当者には安全性と連携の仕組みを、それぞれ中心に書きます。
AIに「この提案を、現場の担当者向けに書き直して」と頼むと、視点を変えた案が得られます。複数の読み手がいる場合は、要約を共通にして、詳細を読み手別に分けた構成にします。
提案後のフォロー
提案書を出したあとの動きも大切です。相手からの質問に備えて、想定問答を作っておきます。AIに、提案書の内容を渡して、「相手から出そうな質問を10個挙げ、回答案を作って」と頼みます。回答案は、事実を確認してから使います。
提案が通らなかったとき
提案が採用されなかったときも、学ぶ機会です。相手に、差し支えなければ、理由を聞きます。価格、時期、内容、優先順位など、理由はさまざまです。聞いた内容を記録して、次の提案に活かします。
AIに、提案書と、聞いた理由を渡して、「次の提案で改善できる点を挙げて」と頼むと、整理の助けになります。ただし、相手の本当の事情は、AIには分かりません。相手との対話から得た情報を最優先にします。
提案書の長さの目安
提案書は、短いほうが読まれます。本文は、10ページ以内に収めることを目安に、詳しい根拠や資料は付録に回します。AIに「この提案書を、本文を半分にして、詳細は付録にする構成に直して」と頼むと、整理の案が得られます。
契約書や覚書との関係
提案書は、契約書とは別の文書ですが、提案書に書いた内容が、期待として残ります。契約の段階で、提案書の内容と食い違いがないかを確認します。約束できない内容を提案書に書いてしまうと、後でトラブルになります。契約に関わる文言は、法務の担当者に確認してもらいます。
次にやること
近く提案書を書く機会があれば、次の順で進めてください。
- 前提を五項目で書き出す
- 構成を決め、AIに要点を出させる
- 効果の記述を、事実に基づく表現に直す
- 費用の数字を自分で検算する
- 相手の疑問を5つ想定し、答えを用意する
骨子の段階で上司や同僚に見せ、意見をもらうと、本文を書く前に方向を直せます。完成した提案書は、提出後に相手の反応を記録し、次の提案に活かしてください。




